入札による不動産の取得と抵当権設定登記

今回は、通常の売買による不動産登記ではありません。

都道府県や市町村などが所有する公有地の払い下げの際に登記はどうなるの?という問題です。

公有地の払い下げの場合、入札となりますので、簡単に言うと一番高い金額を提示した方が落札します。

私自身、当然ながら公有地の入札に参加したことはありませんが、落札された方からのご相談は多々あります。

 

入札で1つ問題となるのは、金融機関から融資を受けて公有地を取得する場合です。

 

まず融資利用をしない入札で取得した場合、ざっくり以下のような流れとなります。

 ①都道府県・市町村と売買契約の締結と契約書への印紙貼付と必要書類の提出。

  →売買契約書は役所が作成します。

 

 ②登記に必要な登録免許税を都道府県・市町村の指定口座に振り込む。

→振込に使える金融機関が限られていますので、注意が必要です。

→振込の控えを役所の窓口に提出する。

 

 ③支払期限までに売買代金を都道府県・市町村の指定口座に振り込む。

 →振込に使える金融機関が限られていますので、注意が必要です。

 →振込の控えを役所の窓口に提出する。

 

 ④都道府県・市町村が管轄の法務局に所有権移転登記の申請をする。

  →嘱託登記(しょくたくとうき)といいます。

  →申請は窓口まで役所の担当者が持っていく場合もあれば、郵送で申請する場合もあるみたいです。

 

 ⑤登記完了後に都道府県・市町村の役所宛に登記識別情報通知(不動産権利証)が届くので、それを落札者が役所窓口に受取りに行く。

 

以上が大体の入札後~登記完了までの流れです。

 

自己資金で入札物件の売買代金を用意する場合は、大体どの自治体も①~⑤の流れです。

(多少前後することはありますが。)

金融機関からの借入を利用する場合

金融機関から融資を受けて不動産を購入する場合は、ほぼ100%購入物件(場合によってはプラスアルファ)に抵当権という担保を登記設定します。

そして、通常、所有権移転登記と抵当権設定登記は連件で登記申請をしなければなりません。

所有権移転登記と抵当権設定登記の間に別の登記が入る余地をなくさなければなりません。
なぜなら、登記は基本的に申請した順番で優先されるからです。一言でいうと早い者勝ちです。たとえば、所有権移転登記の後に仮に別の抵当権設定登記が入ってしまうと金融機関としては、お金を貸したはいいけど先に登記された抵当権が優先してしまうので、もし対象不動産が競売等にかかった場合、金融機関は先の抵当権者が全額回収した後でないと配当がまわってこないので、全額の回収ができない可能性が高くなります。

そのため、連件申請は必須となるわけです。

連件申請をするために、司法書士としては、落札者・自治体の窓口・金融機関の三者間の調整をしていかなければなりません。

細かい話をすると長くなるので割愛しますが、②の後に金融機関の融資実行が入ってきますので③以降が変わります。

③ 金融機関が支払日に融資実行をする。

落札者が売買代金を都道府県・市町村の指定口座に振り込む。

 →振込に使える金融機関が限られていますので、注意が必要です。

**融資を受ける金融機関によっては、自治体に直接振り込めないので、融資を受ける金融機関の落札者名義の口座に融資実行をした後に、すぐに自治体の取扱いのある落札者名義の別口座に振込み、その別口座の金融機関から自治体所定口座に振り込む。というプロセスが必要な場合がります。

 →振込の控えを役所の窓口に提出する。

 

 ④都道府県・市町村が管轄の法務局に所有権移転登記の申請をする。

  →嘱託登記(しょくたくとうき)といいます。

   金融機関の抵当権設定登記と連件で申請しなければなりませんので、振込控えを持って、管轄の法務局の窓口で自治体の担当者と待ち合わせて、一緒に連件で登記申請をする。

 

 ⑤登記完了後に都道府県・市町村の役所宛に登記識別情報通知(不動産権利証)が届くので、それを落札者が役所窓口に受取りに行く。

 

 ⑥司法書士が金融機関に登記完了後の書類を返却する。

 

といった流れになります。

司法書士としては、役所の窓口の担当者・金融機関・落札者の三者間の調整が必要となり、特に金融機関の担当の方には、入札を扱ったことがない方もいらっしゃって段取りが不慣れな方もいるので注意が必要です。