こんにちは、尼崎市の司法書士の村田です。

寒い日が続きますが、たまに暖かい日もあったりで、少しづつですが春が近づいてきている感じですね。
インフルエンザも流行ってるみたいですし、体調管理には十分に気をつけなけばいけない季節です。

さて、今回もあまりないケースでマニアックな話です。

我々司法書士は、登記申請を業として反復継続して行える権限を法律上与えられているわけですが、かといって勝手に登記を申請できるわけではなく、依頼を受けて代理人として登記申請をする場合は、必ず委任状という代理する権限を証明する書面が必要になります。

不動産登記の中でも所有権移転登記や抵当権設定登記・抵当権抹消登記などの権利関係の登記については、原則登記をしなければならないという義務はなく、登記をするかしないかは権利を得た人の任意です。
所有権移転登記や抵当権設定登記などは、取引慣例上、対抗力の問題もありますので、実務上ほぼ必ず登記されますが、抵当権の抹消登記については、抵当権が消滅した後も抹消登記がなされずに、残り続けるケースが多々あります。
主に、金融機関で住宅ローンを組んでいてその金融機関が金銭消費貸借契約に基づいて抵当権者になっている場合や金融機関の保証会社が抵当権者となって保証委託契約に基づいて抵当権が設定されている場合に、住宅ローンを完済したことにより、抵当権が実体的に消滅したにもかかわらず、抵当権の登記を抹消していないケースです。

一般的な感覚として、住宅ローンについては、その毎月の支払いや金利、完済したかどうかを気にする方がほとんどで、完済したからと言って抵当権の抹消登記をしなければ・・・と意識的に思われる方は少ないのではないでしょうか?
金融機関によっては、抵当権抹消登記を勧めて、金融機関指定の司法書士に抹消させたりするところもありますが、抵当権の抹消書類だけを完済書類とともに郵送してきて終わりというケースも多いです。
金融機関によっては、自分のところの抵当権の抹消登記をしようがしまいが、住宅ローン債権はすでに消滅しており、特に影響はないので、あまり積極的に所有者に抵当権を抹消させようと働きかけることはないように思います。

このように何年も、場合によって10年以上も抵当権の抹消登記がされずに残り続けているケースで、問題になる事の1つとして、抵当権者であった金融機関やその保証会社の商号や本店所在地が変わっていたり、合併によって消滅していたり、代表者が変わっていたりした場合に、金融機関が発行している委任状の金融機関の表記が発行当時と現在で異なっている場合です。中でも今回は、代表者が変更してしまっている場合についてお話します。

まず、司法書士に依頼して抵当権を抹消するために登記に必要な書類としては、下記になります。
・登記原因証明情報(解除証書、弁済証書、放棄証書など)
・抵当権設定登記の登記済証または登記識別情報通知(権利証)
・司法書士に対する委任状(抵当権者及び不動産所有者)

原則は、上記3点が必要になります。

この中で、登記原因証明情報と委任状については、抵当権者の商号・本店所在地・法人の代表者が記載してあります。
そして、代表者が変更してしまっている例としては、
平成15年1月31日に住宅ローンを完済した。
→その当時の抵当権者は株式会社A、代表者は代表取締役
平成25年1月31日に抵当権を抹消したい。
→抵当権者は株式会社A(変更なし)、代表者は代表取締役(変更している)
このような場合、委任状を発行した法人代表者甲と抹消登記をしようとしている時点での法人代表者乙が異なるため、甲が発行した委任状は、抹消登記時の平成25年1月31日時点で有効かどうかという問題になります。

結論からいうと、甲の発行した委任状は抹消登記時の平成25年1月31日時点でも有効であり、甲の発行した委任状に基づいて登記の申請をすることができます。

代理権限は本人の死亡・委任の終了によって消滅するのが原則(民法111条)です。そして、当然のことながら、会社の代表者は、代表者であるうちは会社を代表する権限がありますが、退任した後は代表権は消滅します。代表権が消滅するということは、代理権限も消滅するということです。なので、民法の原則論でいえば、甲の委任権限は消滅しており、委任状もすでに有効ではなくなっていることになります。
しかし、不動産登記法は、この民法上の原則を修正して、登記申請代理権限に関しては、当事者に代理権の変更・消滅・死亡等があっても消滅しないと規定しています(不動産登記法17条)。
この不動産登記法17条が根拠となり、甲の発行した委任状は、甲の退任後も有効ということになります。

ただし、条件があり、甲がいつからいつまで代表取締役であったのかということを登記申請時に証明しなければなりません。
言い換えると、甲が委任状を発行した際に代表権限を有していて、今現在代表権限を有していないということを証明する必要があるということです。
これを証明するには、下記のような書類が必要になります。
①法人の履歴事項証明書
②法人の閉鎖事項証明書

簡単に言うと、①は法人の現在および直近数年の記録、②は法人の昔の記録です。
①については、会社法人等番号の提供で代えることもできます。

また、申請書の書き方も通常と異なります。
登記義務者である抵当権者(金融機関)の代表者の代表権が消滅している旨、及びいつからいつまで代表権を有していたのかを記載する必要があります。
「義務者の代表者の代理権限は消滅している。代理権限を有していた時期は、平成14年1月1日から平成20年12月31日までである。」
といった具合です。

もう一つ細かい話で、申請書の義務者(抵当権者)の代表者の記載ですが、すでに代理権限の消滅した旧代表者を記載するのか、それとも現在の代表者を記載するのかが問題となってきます。

答えは、、、グレーです。

どうやら統一見解はまだないようで、法務局によってどちらを記載するべきか異なるみたいですので、法務局に確認した方が間違いないですね。
個人的には、委任状の記載通り旧代表者を記載する方がしっくりきます。上述したようにその代表者の代表権がすでに消滅している旨及び代理権限を有していた時期も記載するわけですからね。
ちなみに尼崎の法務局では、旧代表者の記載で特に問題なく登記が通ります。(今後、登記官が変われば対応が変わる可能性もあります。)

抵当権抹消登記は、それほど難しくない登記であるため、中にはご自身で抹消登記をされる方もいますが、たまにややこしいケースもありますので、抵当権抹消登記がお済みでない方は、お気軽に村田事務所までご相談くださいませ。