こんにちは、尼崎市の司法書士の村田です。

ゴールデンウィークも終わり、初夏のような暑い日も増えてきましたね。

今回は、金融機関が融資をして、つまりローンを組んで競売で不動産を取得する場合の登記その他実務的な手続きのお話をします。

通常の不動産競売であれば、買受人が、期日までに買受金額を裁判所に納付すれば、登記については、裁判所からの法務局への嘱託により登記がされますので、特に登記を申請する必要はありません。
登記を申請する必要はありませんが、所有権移転登記と差押え等の抹消登記についての登録免許税は、買受人負担で裁判所に納付する必要があります。

では、買受人が買受金額を自己資金で一括で納付できないため、銀行等の金融機関から融資を受けて取得し、さらに、融資をした金融機関を抵当権者とする抵当権を設定するためには、どのような手続きが必要でしょうか?

まず、前提として買受人に所有権移転登記がされる必要があります。
通常の住宅ローンを組んでの売買などの場合は、所有権移転登記と抵当権設定登記を連件で法務局に登記申請します。連件で登記申請をすることにより、受付番号が連番になるため、所有権移転登記と抵当権設定登記との間に他の登記が入り込む余地がなく、また、融資実行日に登記を確保できるため、抵当権者は間違いなく登記の順位(優先権)を確保することができます。
しかし、裁判所の嘱託による登記の場合、裁判所から法務局へ直接郵送で行われるため、金融機関が融資実行してそこから買受人が裁判所へ買受金を納付したとしても、買受金の納付日と所有権移転登記の申請日がズレてしまいますし、そもそも裁判所の嘱託登記と抵当権の設定登記は原則連件で申請できないため、裁判所の嘱託登記が申請された後に、抵当権の設定登記を個別で申請しなければならないため、タイムラグが生じ、嘱託登記と抵当権設定登記との間に別の登記が入ってしまう可能性も出てきます。
そうすると、抵当権者は登記の順位(優先権)を確保できない可能性が理論的に生じてしまいます。

このような事態を防ぐために民事執行法第82条2項に裁判所の法務局に対する嘱託書を予め指定した弁護士もしくは司法書士に渡す手続きが定められています。
嘱託書を裁判所からもらえれば、抵当権設定登記の申請と連件申請をすることができます。
そうすれば、通常の住宅ローンを組む売買の場合と同じで、抵当権者は融資実行日に登記を確保できますし、所有権移転登記と抵当権設定登記の間にタイムラグは生じないので、登記の順位(優先権)を間違いなく確保できることになります。

この民事執行法第82条2項の手続きは、中々に手間がかかります。
必要書類も多いですし、書類を受け取る司法書士等の指定書も納付日の3営業日前までに提出しなければならないなど、急な依頼だと時間との戦いになることもあります。

手続の具体的なお話を書いてもいいのですが、神戸地方裁判所尼崎支部が発行している案内と書式を貼っておきますので、興味のある方、お悩みの方はぜひ参考にしてください。

↓ ↓ ↓

http://poy-murata.com/wp-content/uploads/2016/05/民事執行法82条1項の申出関係 案内.pdf

 

ざっくりと流れだけ説明しますと、下記のような流れです。

1.管轄の裁判所に、嘱託書の交付を受ける司法書士(又は弁護士)を指定した申出書と指定書を 買受金の納付日(=融資実行日)の3営業日以上前に提出します。

2.その後、競売代金を支払う代金納付日に、金融機関は買受人は融資実行を行い、買受人は競売代金を支払います。

3.金融機関の領収印のある払込伝票をもって、裁判所の出納係に行き、保管金受領証書を受取ります。

4.競売係行き、受領書及び届出書並びに上記保管金受領証書を含め添付書類を提出します。
→書記官から所有権移転登記の嘱託書を受取ります。

5.所有権移転登記の嘱託書と抵当権設定登記の申請書を連件で申請します。

6.所有権移転登記の登記識別情報(権利証)が、法務局→裁判所→買受人の流れで送付されます。
抵当権設定登記の登記識別情報(権利証)は、法務局→司法書士→金融機関の流れで返却されます。
**所有権移転登記については裁判所の嘱託であり、司法書士は代理人にはなっていませんので、所有権移転登記の登記識別情報は受け取ることは出来ません。

不動産業者などが転売目的で競売物件を落札する場合以外でも、この手続は利用できます。
もちろん個人の方でも利用できます。

ただ、個人で利用しているケースはあまりないと思いますが、競売物件に興味のあるかたは利用するのも一つの手かもしれないですね。