こんにちは、尼崎の司法書士の村田です。

桜も散り、新生活を始められた方も少しづつ慣れてきた頃ではないでしょうか。
私も事務所を移転して1カ月ちょっと経ちましたが、鍵をかけるときにどっちに回して、開けるときにどっちに回すのかまだ間違えてしまいます。
慣れていません・・・

さて今回は、つい先日不動産仲介業者の方から相談頂いたことについてお話します。
タイトルのとおり、不動産の権利証がない場合に不動産を売買するときにはどうすればいいのか?

そもそも不動産の権利証とは何か?まずは、そこからお話ししましょう。

権利証とは、その名のとおりその不動産についていかなる権利を有するかを証する書面のことです。
もっと平たく言うと、所有者であることを証明する書面のことです。
また、所有権以外の権利(地上権などの用益権、抵当権などの担保権)を有する場合でも法的に登記できる権利であれば、その権利について権利証は発行されます。

ここで、実は権利証とは正式名称ではありません。正式には「登記済証」とか「登記識別情報」と言います。
「登記済証」と「登記識別情報」の違いは、発行された年代によります。古いのが「登記済証」で新しいのが「登記識別情報」です。
平成16年に不動産登記法が改正され、全国の登記を管轄する法務局がオンライン化されるまで(平成18年~平成20年頃)は、不動産につき何かしらの権利を得た旨の登記をした場合は、「登記済証」が法務局から発行されていました。
「登記済証」は発行されるというより、登記を申請する際に、同じ申請書を2通提出し、その内1通(申請書副本と言います。)に法務局が受付年月日と受付番号が入った法務局印を押します。もしくは、権利の取得についての契約書など法律関係を証する書面(原因証書と言います。)に申請書副本と同様の印を法務局が押します。どちらかが登記の申請時には必要でした。
そしてこれが登記済証であり、俗に権利証と呼ばれるものです。
「登記済証」が必要な登記を申請する場合は、添付書類として「登記済証」の原本を同時に提出しなければなりません。

それが、不動産登記法の改正と各法務局のオンラインシステムの導入により平成18年頃から「登記識別情報」というものに変わっていきました。
「登記識別情報」は「登記済証」と異なり、法務局から別途新たに発行される書面で、法務局の印は押されていません。その代わりに、アルファベットと数字で12桁のランダムな並びが記載してあります。
そして、このランダムな並びが、その不動産のいわばパスワードのようなものであり、その「登記識別情報」が必要な登記の申請においても、そのパスワード部分さえわかればいいので、特に「登記識別情報」の原本自体は必要ありません。
パスワード部分がわかるようにコピーを取ったものでもいいですし、別紙にメモしたものでもその並びがあっていれば、登記の申請に使えてしまします。
そのため、そのパスワード部分が人目につくと非常に具合が悪いということになります。そのような観点から、「登記識別情報」は法務局から発行された時点で、パスワード部分には、目隠しのシールが貼ってあり、見えないようにされています。そのため、司法書士のような登記の代理人はもちろん、その権利についての権利者本人であってもシールをはがさない限り見えません。
そのシールについては、一度剥がしてしまうと、剥がしたことがわかるようにもう二度とくっつかない仕様になっています。

ここからが本題です。
では、「登記済証」にしろ「登記識別情報」にしろ、権利証がない場合は登記上、どのような手続きを取るのかと言いますと、2通りに分かれます。
1つは権利証が添付されていない登記申請があった場合、法務局から登記上の所有者に宛てて登記の申請がされているが間違いないかどうかのお尋ね書面が本人限定受取郵便(郵便局員が宛名人の本人確認を行い、書留郵便と異なり同居人等は受け取ることができず本人のみが受け取ることのできる郵便)で送られてきます(法人の場合は、法人の主たる事務所へ書留郵便で郵送されます)。これを「事前通知」と言います。そして、その事前通知の内容について間違いない旨の署名と委任状に押印した印鑑と同一の印鑑で捺印したものを、原則通知を発送した日から2週間以内に法務局に返送することによって、登記の真正を担保することになります。
もう1つの方法は、登記を業とする司法書士がその権利についての権利者の本人確認を行い、その不動産の権利者であることを証する書面を作成し、法務局に権利証の代わりにその書面を提出します。つまり、司法書士が、権利証の代わりとなるものを作成するということです。これを「本人確認情報」と言います。

本人確認情報は、司法書士が権利証となるものを創出することになるため、厳格に要件が定められており、必ずその権利者と面談をしなければなりませんし、本人確認をするための身分証についても写真付きの公的書面(1号書類)であれば、1通の確認でOKですが、写真がないものであれば2点(2号書類)の確認が必要になります。
本人確認情報の内容としては、本人の氏名・住所・生年月日等に面談日や面談場所・天気や立会人、どのように本人確認を行ったかなど、結構細かく記載しなければなりません。

通常の不動産の売買における取引において売主(登記義務者)が権利証を有していない場合は、本人確認情報を提供するのが一般的と思われます。取引の現場で本人確認や身分証のチェックを行い、その場で本人確認情報を作成したり、予め売主さんとお会いして、本人確認情報を作成したりします。

事前に権利証がないことがわかっていれば、明確に準備をすることができますが、まれに不動産取引の当日に、売主さんが権利証が見つからなかったとか、別の不動産の権利証を売買対象の不動産の権利証と勘違いしていたなどという場合もあります。そしてそのような場合は、本人確認情報の提供に切り替えて所有権移転登記をするしかありません。しかし、売主さんが要件を整えた身分証を有していれば問題ないのですが、もし要件を整えた身分証がなければ、そもそも本人確認情報を作成できませんので、その場合は、取引自体延期になってしまったりしますのでやはり注意が必要です。

そのため権利証の有無については、事前に不動産業者さんに確認を取ってもらうことが多いですし、場合によっては、私が事前に直接確認することもあります。

また、このような本人確認情報の提供による不動産登記の申請は、所有権に限ったことではなく、抵当権・根抵当権などの担保物権、地上権・地役権などの用益物権の場合にも同様のことが言えます。

所有権以外でよくあるのは、金融機関が融資の担保として抵当権もしくは根抵当権の設定登記をしており、管理の問題から登記識別情報を発行していない場合があります。
この場合に当該抵当権・根抵当権を抹消する場合、登記識別情報(権利証)を提供できませんので、事前通知か本人確認情報の提供により、登記を申請するしかありません。

このように、不動産の権利証を誤って紛失・破棄した場合でも、登記手続きはすることができます。

不動産登記のご相談は村田事務所までぜひご相談ください。