こんにちは、尼崎の司法書士の村田です。

食欲の秋!
秋の味覚の誘惑が多い今日この頃です。

さて今回は、所有権の登記名義人の住所変更登記についてです。
我々司法書士が住所変更の登記をする場面で多いのが、不動産の売却時、特にマイホームの売却時ですね。
なぜ、マイホームの売却時に住所変更登記が多いかと言いますと、マイホームを購入する際は、通常住民票を変更する前に住んでいる住所のまま登記をすることが多いからです。
まあ、まだ実際に住んでいないのに住民票を移していないのは当然では?と思うのが普通だと思います。
しかし実務上、先に住民票を購入予定のマイホームの住所に移しているケースも地域によってはよくあります。
実際、私の感覚では、尼崎より東の地域(尼崎を含む)では、ほとんど住民票を異動させずに今住んでいるところの住所のまま登記をすることが多く、神戸より西の地域では、新しい住所に住民票を移して登記をしているような印象を受けます。その他の阪神間の地域ではケースバイケースといった感じです。

住民票を移す移さないで何が変わってくるかについては、主に2つ理由があります。
1つは、所有権移転登記をする際に、居住用物件で一定の条件を満たしている場合は、登記の際の登録免許税の軽減措置を受けることができ、その軽減措置を受けるために、購入不動産の市区町村において、「住宅用家屋証明書」という書面を発行してもらう必要があり、住民票の異動の有無で、「住宅用家屋証明書」の発行のための必要書類が変わってきますし、どのみち一定の期間内に住民票を移す必要性があるため、先に移しておいた方が後で忘れないという点です(また、住宅ローンを組む場合に、その後確定申告により、住宅ローン減税を受ける場合にも住民票を移している必要があります。)。
もう一つは、購入した不動産をその後売却したり、住宅ローンを借換えたり、住宅ローンを完済した場合などの際に、住所変更登記が必要になってしまい、その分の費用を節減するためです。

理由としては、2つ目の理由の方が大きいでしょうか。
しかし、上記のような売却や借換えなどの理由がありそれぞれ登記が必要な場合は、その前提として住所変更登記が必要になってきますが、何もなければ、そもそも住所変更登記は法的に義務付けられているものではないため、していない方の方が多いと思います。

ということで、売却時やローンの借換え・完済時に、登記上の住所と現在の住所が異なる場合は、住所変更登記が必要になります。

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが今回の本題です。

登記上の住所から現在の住所に至るまで、複数回住民票の異動を伴う住所変更をしている場合、そのすべての住所変更を登記上反映させなければならないのでしょうか?

答えはNOです。

住所変更の原因等にもよりますが、住民票の異動を伴う住所変更が複数回あったとしても、1回の住所変更登記でOKです。
登録免許税も1回分の住所移転でOKです。つまり、住所移転登記をする不動産の数×1,000円で済みます。

ここで、住所移転登記の問題点として、過去に何度かお話しましたが、登記上の住所から現在の住所に移転するまで複数回住所移転している場合は、住民票を取得するだけでは、登記上の書類としては足りない可能性があるという点です。
住所移転登記は登記上の住所から現住所までの住所の変遷がわかる書類を添付しなければなりません。そして、住民票は、他の市区町村から移転した場合などは前住所の記載しか載りませんので、複数回の住所移転をしている場合は、住民票のみでは繋がりがつかないのです。
そのような場合は、戸籍の附票を取得します。戸籍の附票は、住所の変遷が分かる書類で、本籍を特に別の市区町村に移さない限り、住所だけ別の市区町村に移したとしても、住所の変遷がすべて、当該本籍地の役場に記録されます。ですので、特に本籍を異動させていなければ、その間の住民票を移転する住所移転はすべて記録されます。

しかし、本籍を他の市区町村へ異動すると、当該戸籍は除籍(除かれた戸籍)となり、閉鎖されます。そして除籍の附票の保管期間は、除籍になってから5年間と法律で決められています。

そのため、他の市区町村へ住民票だけでなく、本籍も異動させているようなことがある場合で、一定の期間が経過してしまっていると、住所移転の変遷のつながりがつかないケースが出てきます。
そうすると、住民票や戸籍(除籍)の附票だけでは、住所の変遷のつながりがつかないため、当然に添付書類としては足りません。しかし、住所のつながりをつける公的な証明はこれ以上は存在しないということになります。

ではこのような場合は、どうするのかと言いますと、実務的には、住所のつながりはつかないが、登記上の所有者で間違いない旨の所有者の上申書などを添付することになります。法務局や案件によっては、上申書に所有者の実印と印鑑証明書の添付が求められるケースもあります。

このように住所移転一つとっても中々奥が深いですね。
我々司法書士は、住所移転登記については、俗に「名変」(登記名義人住所変更を略したもの)といいますが、名変については、かなり神経を使う部分です。
名変は特に権利の得喪を伴う登記ではありませんが、この名変の登記がきちんと完了していなければ、その後に行われる所有権移転登記や抵当権設定登記、抵当権抹消登記などの登記を申請しても却下されてしまいます。
つまり、住所移転登記と連続で所有権移転登記や抵当権設定登記をした場合に、その前提の名変登記を見落としたり、修正できないようなミスをしてしまい、名変登記が却下されたり、取り下げざるを得なくなってしまうと、その後の登記が根こそぎ却下ないしは取り下げざるを得なくなってしまい、非常に具合が悪いことになってしまいます。
登記自体は、よく目にするものであり、特段難易度が高いものではないのですが、重要な位置づけに置かれていますし、ケースバイケースで登記の仕方も変わってくるため非常に奥が深い登記です。
そのため、我々司法書士の間では「たかが名変、されど名変」という格言的な言葉が特に新人司法書士に対して注意喚起で使われることがよくあります。

他にも名変に関しては、色々注意点と言いますか、論点がありますが、キリがないのでまた別の機会にお話します。

まあ名変登記をわかりやすく例えるなら、中華料理でいうところの「チャーハン」ですね。

基本的であるがゆえに奥が深くバリエーション(五目、エビ、焼豚、キムチ、カニ、あんかけ、などなど)も多いと・・・

はい、明日の昼食はチャーハンに決まりました!