こんにちは、尼崎の司法書士の村田です。

暑い日が続いています。
私も6月からクールビズです。
ノーネクタイ・ノージャケットです。
司法書士も接客業ですし営業職の側面も強いですので、賛否両論あると思いますが、私は毎年この季節はクールビズです。
とはいえ、朝・晩はまだ少し冷える日もありますので、体調管理には十分に気を付けないといけないですね。

さて今回は、抵当権の債務者に相続が発生した場合の登記です。
非常に実務的なお話になりますので、先に言っておくと、特に面白くありません。

以前に抵当権の債務者の住所が登記上の住所から変わっている場合の抵当権抹消登記についてはお話したことがありましたが、今回は、債務者の住所ではなく債務者自体に変更が生じる場合です。

ここで前提として、相続はプラスの財産も承継しますが、マイナスの財産も承継します。
抵当権に付随する債務も当然相続の対象になります。
一般の住宅ローンなんかの場合は、ローン債務者が団体信用生命保険(通称:団信)に加入していることがほとんどのため、亡くなられた場合は、亡くなった時点での残債務は団信により、消滅しますので、相続人は債務承継をせずに、不動産の所有権(プラスの財産)のみを相続することになります。
しかし、団信に加入していない場合は、相続人は相続放棄をしない限りは、原則通りローン債務も承継することになります。そして、プラスの財産は遺産分割の対象になり、相続人間で話し合って、どの相続人がどの財産を承継するかを決めることができますが、マイナスの財産(負債・債務)は、遺産分割の対象ではありませんので、どの相続人がどの債務を承継するかを決めることは原則できません。ですので、各相続人が自身の法定相続割合で債務も承継することになります。
ただ債務については、相続人間で話し合い、どの相続人がどの債務を承継するかを定めた上で、債権者の承諾を得ることができれば、特定の相続人に相続債務の承継をさせることができます。

今回のケースは、収益物件であったため、通常の住宅ローンとは異なり、債務者が団信に加入していないケースでした。そのため、相続人が債務を承継することになりました。相続人は妻と子2人の計3人でしたが、妻のみが債務を承継することとする話合いが相続人間で成立し、抵当権者である金融機関も承諾したため、妻のみが債務を承継することになりました。

では、このようなケースでは抵当権の債務者を妻単独にするためにはどのような登記が必要でしょうか?

このようなケースの場合、相続を原因として、妻を単独の債務者とする抵当権変更登記をすることができます。
逆にいったん債務については、相続人全員で承継し、その後、特定の相続人が抵当権者と他の債務者の債務を引受ける免責的債務引受契約を締結し、他の相続人の債務を引き継ぐ場合は、いったん、相続を原因として、相続人全員を債務者とする抵当権変更登記をし、その後に債務引受を原因とする抵当権変更登記をしなければなりません。その場合もちろん、登録免許税も2回分かかります。

では、今回の相続を原因とする抵当権の債務者の変更登記をする場合の登記原因証明情報は、いったい何が必要でしょうか?
相続を原因とする所有権移転登記の場合は、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡するまでのすべての戸籍関係に実際に相続する相続人の現在の戸籍に加え、相続人が実印を押した遺産分割協議書に印鑑証明書添付して・・・などなど添付書類も多いですが、抵当権の債務者の変更の場合は、戸籍などの相続を証明するような書類は特に不要です。
いついつ被相続人が死亡し、抵当権の債務については、相続人のだれそれが承継し、抵当権者も承諾したので、抵当権の債務者はだれそれに変更した、といった内容の報告型の登記原因証明情報に不動産の所有者(登記義務者)と債権者(登記権利者)の捺印をしたものだけでOKです。

この点、不動産登記法の改正時に論点になりましたが、旧不動産登記法の時代においては、法律関係を記載した登記原因証明情報を添付する必要はなく(そもそも登記原因証明情報の概念がなかった)、申請書と同じもの(申請書副本)を添付すればOKであり、それに登記済みの印鑑を法務局が押したものが、不動産の登記済権利証になっていました。そして、旧法時代ですら相続関係を証する書面が必要なかったのに、現行法に変わり、旧法時代よりも登記手続きの運用が厳格になったことで、登記原因証明情報を添付することが義務付けられたにもかかわらず、さらに加えて相続関係を証する書面が必要なのか?ということになり、不要と判断されました。
そのため、今回のケースで必要な添付書類としては、下記のものになります。
・登記原因証明情報
・登記識別情報(権利証)
・金融機関の代表者事項証明書
・委任状

戸籍関係や遺産分割協議書は不要です。

このように相続が発生した場合に相続財産の中に債務がある場合などは、慎重な対応が必要になります。
債務が少額であったり、プラスの相続財産を超えていなかったりする場合は、そのまま相続すれば特に問題がないケースが多いですが、逆の場合は、下手にプラスの財産に手を付けてしまうと相続放棄できなくなってしまいます。
また、相続財産の中に不動産がある場合も、債務が多額であったとしても、手放したくないという相続人の方も珍しくはありませんので、その場合もよく考えて結論を出すことを勧めています。

亡くなられた方の債務を調べる方法については、また改めてお話することにして、今回のケースは、プラスの財産が多い場合だったみたいで、その点は特に問題はありませんでした。

また、余談になりますが、今回私が一番驚いたのは、抵当権の変更登記の前提である相続による所有権移転登記は、相続人の中の1人の方が色々お調べになり、また法務局に相談したりして、ご自身で登記を完了させたことです。
これは、中々大変だったと思いますが、素晴らしいですね。
物件数も多く、費用が高額になることを心配されてご自身でされたとのことでした。
そこでざっくりこれくらいですよと費用を伝えたら、「そんなもんですか、それなら頼んでもよかったかも。」とのことでした。

最初から私のところにご相談に来ていただいていれば・・・

実際に依頼するかどうかは別として、遺産・相続関係のご相談だけでも専門家にしていただければと思います。