こんにちは、尼崎の司法書士の村田です。

最近暑い日が続いていますね。

私は、暑いのは好きなので、これからの季節は好きです。
仕事柄、日頃はスーツにネクタイなのですが、私は汗かきなため外を回っていると汗ばむ季節です。少し早いですが、クールビズを導入しようか悩んでいる今日この頃です。

さて、今回は、抵当権の効力が及ぶ範囲についてのご相談を受けましたので、その点についてお話をさせて頂きます。

抵当権は典型的な担保物権であり、住宅ローンを組んだり、事業資金を借り入れたりなどした場合に所有の不動産に設定されることが多いです。
この抵当権の目的となり得る財産は、登記・登録することができるものに限られており、不動産所有権、地上権、永小作権、採石権、立木法(りゅうぼくほう)上の立木、工場抵当法による工場財団、などに設定することができます(民法369条1項・2項、採石法4条3項、工場抵当法8条)。
このうち、よく目にするのが、前述したように不動産の所有権に対する抵当権の設定です。

抵当権が設定した対象不動産に及ぶのは当然のことですが、では、例えば、当初建物に抵当権を設定し、その後その建物を増築した場合や、石垣や敷石など、さらには建物の雨戸や戸扉、障子やふすまや畳、土地に抵当権を設定した場合における庭にある石灯籠などにも及ぶのでしょうか?

増築した部分は分離できないけど、あくまでも抵当権を設定した後に増えた部分ですし、障子やふすまや畳などは一見建物の一部のようですが、簡単に建物から分離できるものですし、そもそも不動産ではありません。

この点、付合物と従物に分けて考える必要があります。
そして民法370条には「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物(付加一体物)に及ぶ。」と規定があり、この付加一体物については、
民法上の付合物(242条)と従物(87条)との関係で、解釈上争いがあります。

まず、付合物とは、民法242条に「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。」と規定があります。平たく言うと、不動産以外の物が不動産にくっついて、分離して元に戻すことが不可能か、元に戻すことが著しく不経済(費用がかなりかかる)の場合は、不動産所有者がそのくっついた物を取得するということです。
この付合物については、抵当権の設定をする前後を問わず、抵当権の効力が及びます。
ただし、例外的に、抵当権の効力が当該付合物には及ばない旨の特約の登記をしていたり、抵当権より先に設定された地上権などの法律上の権原を持っている方が付合させた物(例えば、地上権者が植栽した立木など)で独立性のある物については、付合物であっても抵当権の効力は及びません。

次に、従物とは、民法87条に「1.物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。2.従物は、主物の処分に従う。」と規定があります。これも平たく言うと、主物の効用を助けるものではあるが、主物からは独立している物で同時に処分するべき物のこと、つまり、セット(ニコイチ)で1つといったイメージです。例えば刀と鞘、ボールペンとキャップといった具合です。そして、この従物は主物の処分に従うことになります。
判例上は、付加一体物=付合物として捉え、従物は含まないとしていますが、付加一体物とは別の理屈で、民法87条2項の「主物は従物の処分に従う」といった規定から抵当権の設定行為がその「処分」にあたるという理由で、抵当権の設定当時の従物には抵当権の効力は及ぶとしています。そのため、この判例の言い回しからすると抵当権設定後の従物には抵当権の効力は及ばないという解釈もすることができます。しかし、抵当権設定後の従物に抵当権の効力が及ぶかどうかを判断した明確な判例はありませんし、多くの学説では従物も付加一体物に含まれると解釈され抵当権設定後の従物にも抵当権は及ぶと解釈されているようです。

抵当権の効力が及ぶか及ばないかの点につき、付加一体物に付合物と従物がそれぞれ該当するかどうかということについては、一般的感覚でいうとそうたいした問題でもないような気がしますが、最高裁まで争ったケースがあるというのは驚きですね。
しかし、今回の抵当権の効力の話だけでなく、法律の解釈にゆだねられている部分の多くは、最高裁の判例が裁判上非常に重要になってきます。
民法が制定されて120年近く経ちますが、このような判例の積み重ねは先人の法律家の方々が苦労して法理論を組み立てて積み重ねてきたおかげなんですよね。

さあ、ここで、答え合わせです。

・増築部分→主たる建物に符合しますので、付加一体物にあたり、抵当権の効力が及びます。
・石垣・敷石→付加一体物にあたり、抵当権の効力が及びます。
・雨戸・戸扉→付加一体物にあたり、抵当権の効力が及びます。
・障子・ふすま・畳→従物であり、抵当権設定時に存在すれば抵当権の効力が及びます。
・庭の石灯籠→従物であり、抵当権設定時に存在すれば抵当権の効力が及びます。
・立木→立木法上の明認方法を採っていなければ、付加一体物にあたり、抵当権の効力が及びます。
・庭石→取り外し困難であれば、付加一体物として抵当権の効力は及びますが、取り外しが容易であれば従物として抵当権設定当時に存在すれば抵当権の効力が及びます。

最後にこの論点についてよくあるご相談としては、「建物に抵当権を設定したいが、増築部分があり、増築の登記をしていないが、抵当権を設定しても大丈夫か?」といったものが多いです。
これは、もうお分かりですよね。
増築部分は主たる建物に付合し、付加一体物にあたるため、抵当権の設定の前後を問わず、抵当権の効力は及びますので、民法上は問題ありません。
ただ、建ぺい率や容積率など建築基準法等の法令に合致していない建物である場合、違法建築の可能性もあるので、そうなった場合に市場価値がないと判断されることもあり、そうなると建物の担保価値はほとんどないということにもなりかねません。
そういった点では、慎重に検討した方がいいかもしれませんね。

抵当権については、民法上も不動産登記法上も非常に奥が深いものですので、理解するには中々一朝一夕にはいかないと思います。

ちなみにこの論点は、実は司法書士試験でもまあまあ頻出の論点です。私も書きながら少し受験時代を思い出していました。
そして試験まであと1か月ちょっとだなぁと。

受験生の方々は直前期で不安も多いと思いますが、自分を信じて頑張ってください。

今回の論点も受験生の方はぜひ押さえておいてくださいね。

と言いつつ、受験生で見てる人は流石にいないですかね。 笑